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アジア法律家交流会第2回目「セクシャル・ハラスメント&性暴力犯罪に関する勉強会」

2022年3月29日、アジアの弁護士や専門家が情報交換や知識を共有することを目的とした東京大学主催のオンライン交流会の2回目にALNのメンバーが参加しました。2回目は、セクハラと性暴力犯罪をテーマにした勉強会でした。日本からは、セクハラ、ドメスティック・バイオレンス(DV)、ポルノグラフィーの問題を専門とする弁護士の角田由紀子先生に、講師として参加頂き、日本におけるセクハラや性暴力犯罪の現状や課題をテーマに講義をして頂きました。中国からも、セクハラや性暴力犯罪を扱う弁護士数名が参加し、質疑応答では活発な質問や議論が展開されました。


以下は、講義と質疑応答の内容をまとめたものです。


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刑法性犯罪


110年ぶりの改正まで

日本では、2017年まで110年間も性犯罪に関する刑法の改正がなく、女性も含む多くの国民は、改正の必要性も感じず、要望もなかった。制定された1907年当時は家父長制が当たり前で、性暴力は問題視されなかった。「貞操」の定義はなかったが、自分の解釈では、男性に有利な定義だった。当時の女性は参政権もなく、法立法などにも関与できなかった。1933年に弁護士法が改正されるまでは、司法科試験は男性しか受けられなかった。1940年にようやく3人の女性弁護士が生まれた。


刑法177条、178条は、改正前は「強姦罪」「準強姦罪」と呼ばれていた。加害者に緩く、被害者に厳しいものだった。この177条の要件である暴行・脅迫は、唯一の構成要件であり、どちらかがなければ犯罪にならなかった。戦後の最高裁で、「程度」が「著しく抵抗が難しい程度に」とまでなった。178条に関しては、「抵抗できない」程度だ。そのような制度の下では、女性の人権の視点はなかった。現在でも女性被害者の人権が大事にされているわけではない。男性中心の仕組みや思想に加えて、「強姦神話」などが女性被害者の人権を奪っている。


2017年の改正と問題点

2019年に名古屋地裁岡崎支部の判決で、実の父親による19歳の娘に対する強姦事件があった。裁判所は、被害者は不同意であったが抗拒不能ではなかったとし、要件を満たしていないため無罪という判決が出された。これがフラワーデモのきっかけになり、人々の意識改革を促し、世論も喚起するようになった。再度の改正については、改正論議が国民の関心になっていたが、たくさんの論点が議論されている。被害者を始めとする女性たちの要望は、狭い構成要件をもっと広げることだった。具体的には、現行の暴行行為だけでなく、「不同意」を構成要件にする方向で議論されている。


2017年の初めての改正では5つの改正があった。

①男も被害者になりうる

②膣性交のみでなくなった

③「強姦罪」から「強制性交等罪」に呼び方が変わった

④3年の懲役を5年にまであげた

⑤監護者強制性交等罪(18歳未満の未成年者を監護する者。大抵は実の親。未成年者の意思に関わらず、例え同意したとしても、性交すれば犯罪になる)が新しい犯罪として加えられた


現在進行中の法制審議会

被害者や被害者支援団体・エキスパートなどが加わって、被害実態に基づいた議論になっている。これまでの刑法改正は、学者、役人、被害者側弁護士はいたが、被害者の意見を聞く必要があるという認識がなかった。前回の改正後に、被害者の話を聞くことの重大性が問われた結果、現在では被害者の視点が入れられるようになった。


きっかけになった岡崎の不当な判決に対する批判から、「不同意性交犯罪」という総論部分では委員の意見は一致しているが、何が具体的に不同意なのか、は意見が分かれてまだ議論が続いている。今開かれている通常国会は6月までだが、それまでに改正案がまとまれば、改正が実現するのではないか。


根本的な問題

法律の改正が実現しても、実際に運用するときの問題として、裁判官、検察官、弁護士、警察官など運用側の教育問題がある。法学部や法科大学院でも、ジェンダー教育が欠如しており、運用側の者たちはそのような教育を受けてないのが問題。いわゆる「強姦神話」は浸透したままで、「刑事事件」としての性暴力の扱いだけではなく、性暴力を不法行為として損害賠償を請求する「民事事件」の判断にも影響している。1938年に初めて女性が司法試験を受けられるようになったという歴史的背景がここにも尾を引いている。現在でも、女性弁護士は全体の2割にも達していない。検察官も裁判官も3割に達していない。この法律分野の偏りが、判断にも関係している。


2.セクハラ


日本初のセクハラ訴訟

日本でセクハラが初めて民事事件で裁かれたのは、1989年に提訴され1992年に判決が出た福岡地裁での「福岡事件」だ。この裁判は、1986年のアメリカの連邦最高裁でのヴィンソン事件などを参考にしたものだが、日本にはアメリカのCivil Rights Actのようなセクハラを禁じる法律がなかった。仕方なく民法の「不法行為」を用いた。日本では、やむなく不法行為の類型の一つとして扱ってそれが認められたが、アメリカ法のような対応を日本法ではできないままにしている


福岡事件で勝訴したことで「セクハラ」という言葉が流行ったが、この言葉は裁判を男性週刊誌がからかうために編み出されたといえる。言葉自体は日本中で流行ったものの、問題点である「セクハラ=性暴力・性犯罪」という肝心の点が社会で認識されたわけではない。


30年後の現在の状況

今年は、最初の勝訴から30年になり、セクハラに対する社会意識は徐々に高まってきた。現在では、企業や大学などである程度の対策が講じられており、懲戒解雇なども使われるようになった。しかし、法的対応は不十分なまま現在に至っている。福岡事件後の1997年には、男女雇用機会均等法が作られた。その中で、事業主に対してセクハラ防止の「努力義務」も定められている。それに従って、厚生労働省が防止のための指針を作るところまできた。2007年には、「努力義務」からもう少し厳しいもの(事業主の防止のための措置義務)に改正された。現在では、この法律でLGBTもカバーされている。


日本で使っている「不法行為」は明治時代に作られたもので、セクハラ、性差別、差別そのものも知らない法律であり、本来の対象はお金で解決できる被害のためのものだった。最初に考えられた法律の枠組みと現状の間で、ミスマッチが生じている状況だ。このミスマッチが、現在のセクハラ事案の被害実態にそぐわない問題を生み出している。慰謝料などの損害賠償金以外の法的救済方法がなく、賠償金も被害実態に見合わない非常に低い金額だ。


国際基準と日本

2019年に採択、2021年に発効されたILO190条約(仕事の世界における暴力とハラスメントに関する条約)は、採択の際に日本政府と労働者の代表は賛成したが、経営者団体は、反対はしなかったものの棄権した。批准の条件は、罰則付きの禁止条項のある国内法がまずあることだ。日本にはないので批准できないままであり、国際的基準から遅れている。日本政府は批准に消極的で、批准を求める女性労働者の運動もあまり見られない。


今年1月の国会で、野党から政府に対して批准に関する質問があったが、「検討中」という回答だけで、批准に向けた準備などには触れなかった。政府は、現在は不法行為法で裁判できているからそれで良い、という認識だ。不法行為法の問題点が指摘されても、知らないふりをしている。2019年の国会で禁止法を作る議論が野党から出たが、作られずに終わっている。初めての勝訴判決から30年経ったが、日本ではセクハラ対応は進展しないままだ。30年前と同じような事件について、今でも裁判をやっている状況だ。性暴力もセクハラも、それを生み出す社会的構造が変革されない限り被害は減らないが、その点は注目されないままで、裁判も同じままである。社会構造を示すジェンダーギャップ指数は、日本は世界で120位あたりを低迷中だ。


ジェンダーギャップ指数を図るための項目である政治・経済が、日本は非常に低い。政治は2年連続でワースト10であり、経済も117位だ。それらが日本の全体指数を引き下げている。しかし、社会構造問題は、女性からもさほど関心を持たれていない。日本国内でジェンダーギャップ指数のランキングは認識されても、問題点まで行き着いていないのが現状だ。


質疑応答 & ディスカッション

①2017年の刑法改正以来、今年まで議論が続いているということだが、近年の一連の法改正とMeToo運動との関連性を教えてほしい。中国でも、ある程度MeToo運動が話題になっており、裁判所が初めて民法の中で、セクハラを不法行為の類型の一つとして認めた例もある。MeTooとの関連性は高いが、日本ではどうか?


応答:日本でもMeToo運動の影響は大きいし、フラワーデモもそのひとつの形だと思う。アメリカの女性運動のようなレベルではないが、人々の意識改革には役にたっていると思う。


②幾つかの大学で、非常勤でジェンダーを教えています。共感したのは、日本で強姦やセクハラ事件があったときに、被害者を責める習慣が強いという点だ。自分の調査から見ても、男女問題の中でも、トランスジェンダーの話になると複雑にからんでくるようだ。女性を守るために女性だけの空間が作られたりしても、そこにトランスが入ると拒否されたり、セクハラ防止の法律を利用して、トランス女性の参入を拒否する傾向も見られる。誰が被害者なのか、という点では、複雑なダイナミックスが生じている。欧米のトランス排除的なフェミニスト運動との関連もあると思う。法律的な観点からすると、被害者としてのトランス男性・女性をどう考えれば良いか?


応答:トランス問題は非常に難しい問題だ。例えば、女性トイレなど女性を守るための空間にトランスが入ると怖い、という議論がずっとあるが、トランス女性・男性の解釈が様々であり、曖昧である。例えば、日本には性別変更の法的手続きがあるが、外科的な手術後に家庭裁判所に申立して認められたら、法的に変更できる。そのような人たちがトランス女性を名乗っている。法律が性別変更を認めたので、トランスと言う必要はないと思う。


今問題なのは、手術は受けてないがホルモン治療で見た目は女性にしか見えない人たちだ。そのような人たちが女性トイレに入ったら女性の安全の侵害ではないか、という運動が出てきているが、賛成ではない。単なる女装とトランス女性は違う。トランスするために一定のことをやっていながらも法的手続きを行っていない人たちも、女性として扱われるのは良いと思う。性暴力犯罪に関しては、被害者は女性に限定されなくなったので、性犯罪として把握できるのではないか。ただ、トランス問題は、議論が難しいことは間違いない。


③国会での法改正のやり取りなどが勉強になった。女性があまり積極的に取り組んでいなく、日本全体も積極的に取り組んでないイメージを受けた。同時に、国会の法改正のやり取りやフラワーデモなど様々な動きがあったようだが、社会全般的には問題意識が低いのに、どのような背景で性暴力の法改正は可決されたのか教えてほしい。


応答:社会全体で見ると、女性の力は大きくなかったが、被害者が運動の中心になって声をあげたことが大きい。今までは被害者は黙らされていたが、実態に対する理解が進んだのは大きな力となっている。全体的には女性の関心はまだ低いが、一生懸命な女性が多かったという話ではないかと思う。


④さきほど福岡事件(初めてセクハラが違法と認められた事件)の後、民事におけるセクハラ訴訟が可能となったということだが、30年後の今でも、不法行為法があれば充分という政府の言い分もあることから、当時の福岡事件の勝訴が現在の法改正の結果に出てしまったという理解で良いか?もしもう一度福岡事件をやり直せるなら、当時の訴訟対策や修正点などあれば教えてほしい。


応答:不法行為法でやったのは当時としては良いアイデアだったし、同じ手法による訴訟が増えていった。一定の成果はあったが、セクハラ防止という目的上、不法行為法では問題の核心まで届かなかった。不法行為法を借りないで、セクハラ被害に着目した新しい法律が必要だと思うが、この議論に賛成する弁護士は少ない。


また、不法行為法を使ってやると、その法が持つ制約がある。その制約が、セクハラ事件にかかってくるという問題がある。民法には、損害賠償額を考える時に考慮していいとされる過失相殺(被害者の過失)という規定がある。日本ではセクハラと交通事故は同じ法律で裁かれるが、被害者にどの程度問題・落ち度があったかを加害者が言い立て、その分を損害額から削ることができるようになっている。交通事故では問題ないが、セクハラ関係で一番困るのは、被害者に対して、「あなたの方が誘ったから、あなたも悪かった」という方向に持っていかれる。法律がそれを許しているのでやむを得ない。


加えて、弁護士に不法行為法でやる上での問題点を話しても、あまり理解されない。とりあえず賠償金が取れて勝訴できればおしまいになり、被害者に対する真の救済になっていない点までは考えが及んでいない。


⑤中国も福岡事件以前と同じ状況で、民法を借りて実際はセクハラ訴訟をする方法を取って来た。中国の場合は、不法行為法が執行されたのは最近のことで、それ以前は別のものを無理やり応用して訴訟をしていた。今は、不法行為法があるが、角田先生の挙げた問題点が、中国にも全て当てはまっている。特に、証明責任が難しい。民法の場合では、賠償を求める原告が証明責任を負担するのは当然だが、セクハラ事件の場合は、証拠を出すのが困難という特性がある。民事事件の枠組み内では、その点があまり考慮されていない。また、昔担当した事件では、若いカップル間のトラブルという民事法廷の主張が、加害者によって普遍的に使われていた。それが民事法に伴う問題だと思う。


応答:ご指摘のとおりだ。不法行為法を使うと、立証責任は原告にある。被害者がいろいろ証明する必要がある。アメリカなどでは、セクハラは性差別として捉えられるため、被害者は「差別を受けた」と訴えるだけで良く、加害者が反論・立証するので、立証責任は加害者側にある。これを立証責任の転換という。セクハラは性差別事件なのでそのようにするべきだが、セクハラは性差別事件という概念がないため、立証責任の転換ができない。


セクハラが普通の民事訴訟では難しいもう一つの理由は、セクハラは権力関係が生み出す性差別であるという観点が入らない点である。加害者の方が力(権力・お金)を持っているという特種な関係の中での被害救済において、被害者・加害者は対等関係と想定された不法行為法は全く性質の違うものだ。セクハラはそもそも、加害者の方が力を持っているという権力の不均衡がある。その不均衡は、加害の時も裁判の時も、力のない被害者がとても苦しむ仕組みになっている。加害者は弁護士を何人でも雇えるが、経済力のない被害者はLegal Aidに頼るしかない。


⑥2017年の刑法改正の後で、男性も被害者になりえるということですが、それから5年ほど経って、実務的に何か変化はあったか?


応答:男性の被害が表に出ることは少ない。被害はあったとしても、もともと被害者は女性中心だったため、被害者として名乗り出ると男らしさがなく、女々しいと取られる。検察官などの法律家でも、偏見はそう簡単になくならない。


⑦未成年者や親子の話があったが、全体的に未成年者に対する性暴力の状況は?法改正での議論なども詳しく教えてほしい。


応答:これは日本で非常に問題になっている。まず、13歳以下の人との性行為は、子供の同意・不同意にかかわらず、誰がやっても犯罪となる。14歳になると、子供が不同意でも、それを言わなかったり反抗しなかったりすると、不同意にならない。そのため、改正の議論の一つに、性交同意年齢引き上げがある。何歳にするかが議論されているが、日本は義務教育は15歳までなので、15歳までは不同意とされるべきだと思う。


もうひとつの問題として、時効がある。現在は、性犯罪被害から10年だが、7歳で被害に遭ったら、10年後の17歳ではまだ未成年で訴えることができない。未成年で被害に遭った場合には、ヨーロッパと同じく時効が伸ばされるべきだ。大人になって被害を認識してから訴えようとしてもできないのはおかしい。議論が展開されてはいるが、学者からは賛成されていない。


未成年に対する性暴力問題で進んだ例としては、学校の先生から生徒に対するケースだ。そのような事件がとても多いが、これまでは教師の免許を失わないで別の学校で教えることが許されてきた。その連鎖を断ち切るために最近作られた法律により、加害者の教師は二度と教壇に立てないようになった。この法律は、被害者やその親たちが中心に立ち上がって実現した。生徒に対する教師からの暴力を肯定する理由はあり得ないため、運動になり、法律の実現にまで達したのだと思う。ただ、教師以外の普通の大人となると話は違う。


⑧男女雇用機会均等法が何度か改正されたということだが、具体的に何を要請するものなのか教えてほしい。例えば、就職活動中のセクハラや性的差別に対して、この法律では救済ができるのか?また、職場でもしセクハラが起きた場合は、加害者だけでなく事業主にも何らかの法的責任はあるのか?


応答:この法律は、基本的に加害者を処罰するものではなく、事業主に対してセクハラ防止のための措置を取らせるためのものだ。「使用者の雇用管理上の措置義務」と呼ばれている。法律に違反しても何も起こらないという問題がある。違反した企業は勧告を受けるが、それでも対応しない場合のために、2007年に企業名を公表するという罰則ができた。企業が恥をかくだけのとても日本的なもので、実際に公表された企業は一件のみ。セクハラをどう禁じたりなくしたりするか、という観点から考えると、中途半端な法律ばかりだ。そのため、セクハラ被害に着目した役に立つ法律が作られるべき、というのが我々の主張だ。


⑨中国では、被害者が政府機関(台湾の労働局。日本の厚生労働省。)のセクハラ・ジェンダー担当委員会に事業主を検挙したり、セクハラ防止法で裁判を起こすことができる。日本の場合は、行政の罰則以外に、被害者が何らかの方法で政府の窓口に苦情申立てや裁判を起こすことは可能か?


応答:都道府県の労働委員会が窓口ではあるが、そこで出される解決策は裁判の基準に合わせてあるのであまり意味がないし、裁判より賠償額はずっと低い。


⑩セクハラや性暴力問題に関する法律や社会構造の改革を求める女性が少なかったり、多様性が謳われる一方で大きなアクションがないのには、何らかの理由があるのか?日本では新しいLGBTパートナーシップができたらしいが、なかなか実際には踏み込めていないという現状もあるようだ。表面的に形式が揃っても踏み込めない理由は?


応答:国連の女性差別撤廃委員会が求めたのは、労働における性差別の禁止だった。ご指摘のとおり、問題の核心に踏み込まず、表面的に綺麗に見せてやり過ごすというのは、日本に特有のようだ。これは、いろいろな分野でみられる現象だ。例えば、2017年の刑法改正で、男性も性暴力の被害者になり得るとなった。被害者を女性のみとするのは、憲法14条に違反するのだが、なぜ男性も加えられたかというポイントに触れないままだ。とても残念なことだ。


⑪日本の法改正を推進する際に、社会的に注目された事件が大きな役割を果たしていることに気づかされた。重大事件が起きてから初めて、課題の重大さに国民が気づいて法改正が行われると思う。けれど、それがない限りは、法改正は難しいと思う。どの国でも同じかもしれないが、こういった状況に対する法学者や弁護士たちの戦略は?


応答:大きな事件がきっかけで法改正が進むのは、どこでも同じだ。ただ、女性が性被害を受けるのは、我々女性にとっては大きな事件でも、男性や社会一般からすれば大きくなかった。2019年の実の父親による強姦事件が世間に大きく知られるようになったのは、新聞記者に若い女性が増えたことと関係がある。女性記者が大事件だと書いたことで、大きく広まった。法学者と弁護士の戦略については、法学者でも弁護士でも、性暴力に関心を持つのは少数派だと思う。弁護士でも、刑事弁護人(加害者の弁護人)には、刑法改正に反対する人が多い。刑が重くなるのが理由だ。刑法学者も、基本的には反対派が多い。


⑫この分野で長い間取り組んできたと思いますが、そこまで性暴力問題にコミットする理由は?


応答:私が学生の時は、女性に対する差別が当たり前だった。大人になっても女性だからと差別されてきたので、女性に対する差別に対する怒りが闘うエネルギーになってきたのだと思う。自分でライセンスを取るしか仕事につく方法はないと思い、司法試験を受けて弁護士になった。女性の権利に関する分野の仕事をすればするほど、他にやる人が少ないので仕事は増える一方だ。そのような状況の中でずっと仕事をしてきて、現在に至る。


コメント

自分の経験から言うと、中国も同じだ。中国では、2000年に初めてセクハラ認定された事件があり、その後に性暴力・セクハラ犯罪の被害者が社会的に発信し続けてるのは、この20年間の力になっているといえる。

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現在、日本では、性犯罪に関する刑法改正が審議されています。今回の勉強会は、トピックがタイムリーというだけでなく、刑法改正に至るまでの背景を改めて知る良い機会にもなりました。また、司法界はいまだ家父長制的な考えに支配されているだけでなく、女性の権利に対する社会全体の意識が低いことなどが、根本的問題だということも明確にされました。女性に対する暴力や差別行為が罰せられない社会は、人権が尊重されている社会とは決して言えないでしょう。ジェンダーに基づくあらゆる暴力や差別のない社会をつくるためには、教育や啓発活動などを通して、ジェンダー問題に対する関心や知識を高めることが重要なのではないでしょうか。



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